物語構造
誤誘導(レッドヘリング)
読者を誤った結論へ導くために仕込まれる偽の手がかり。ミステリ書きの、意図的な目くらましの道具です。
フィクションにおける誤誘導(レッドヘリング)とは、「読者や観客を誤った結論へ導くことを意図した偽の手がかり」です。この句は、強く燻された赤みがかったニシンの燻製に由来し、その比喩的な使用は、ウィリアム・コベットが1807年に、猟犬を匂いから逸らすために燻製を跡に引きずったという話で広めました。ただし語源学者たちは、その話自体が、実際の狩猟の実践についての誤った考えを広めたことを示しています。同じ名前は、議論における関連性の誤謬、必ずしも意図的ではない目くらましの戦術も覆います。
ミステリフィクションでは、これは重量を支える装置です。『緋色の研究』でのホームズの「Rache(復讐)」の手がかりは、警察と読者を間違った容疑者へ向けます。『ダ・ヴィンチ・コード』のアリンガローサは、名前からしてレッドヘリングで、イタリア語のaringa rosa(ローズ色のニシン)をゆるくもじったものです。書き手にとって、正直なレッドヘリングは、真実の事実で誤導します。それこそがフェアプレイミステリ(本格ミステリ)の契約が要求することであり、それはチェーホフの銃の、意図的な従兄妹です。作者が決して撃たないと決めた、壁に掛けられた銃。